爬虫類飼育におけるカルシウム補給の重要性および、「ダスティング」と「ガットローディング」について説明します。
爬虫類を飼育する上で、カルシウムの給餌管理は非常に重要です。カルシウムの補給は爬虫類の健康維持に欠かせません。
今回は、爬虫類にカルシウムを与える主な方法である「ダスティング」と「ガットローディング」について詳しく解説します。

この記事は以下のような人におすすめ
・「爬虫類の栄養管理に不安がある人」
・「カルシウム補給の重要性を理解したい人」
・「ダスティングとガットローディングの方法を学びたい人」
カルシウムの重要性
まず、爬虫類にとってカルシウムがなぜ重要なのかを理解していきましょう。
1. 骨格の形成と維持

カルシウムは、骨や甲羅の形成に不可欠な栄養素です。特に成長期の個体(幼体)は、十分なカルシウム摂取が健康的な骨格発達につながります。
2. 筋肉の機能

カルシウムは筋肉の収縮と弛緩にも関与しています。適切なカルシウム摂取は、爬虫類の運動能力の維持に重要な役割を果たします。
3. 神経伝達

神経系の正常な機能にもカルシウムが必要です。カルシウム不足は、神経系の問題を引き起こす可能性があります。
4. 代謝プロセス

カルシウムは、様々な代謝プロセスにも関与しています。体内のホルモンバランスの維持にも重要な役割を果たします。代謝が良いと成長期には頻繁に脱皮を行う種が多いです。
カルシウム不足のリスク
カルシウムが不足すると、爬虫類にさまざまな健康問題が生じる可能性があります。
1. 代謝性骨疾患(MBD)

最も深刻な問題の一つが代謝性骨疾患です。骨が弱くなり、変形したり折れやすくなったりする状態です。
代謝性骨疾患になってしまい骨が変形してしまった場合には、元には戻りません。歪んだ骨が原因で成長過程で亡くなってしまう可能性もありますので、一番気を付けなければいけない問題です。
2. 成長障害

若い個体では、カルシウム不足により正常な成長が妨げられる可能性があります。カルシウム不足により、体が大きくならず弱い個体になってしまう可能性があります。同時期のハッチの個体と比較しても、脱皮の頻度が少ない場合が多いです。
3. 産卵障害

メスの場合、カルシウム不足は産卵時の問題を引き起こす可能性があります。カルシウムを多量に使用して産卵するため、母体の生体の栄養が足りなくなり、健康を害する可能性があります。
4. 筋力低下
カルシウム不足は筋力の低下を招き、運動能力に影響を与える可能性があります。
5. 神経系の問題
重度のカルシウム不足は、けいれんや麻痺などの神経系の問題を引き起こすことがあります。
これらのリスクを考えると、適切なカルシウム補給の重要性が明らかです。では、具体的な補給方法について見ていきましょう。
ダスティングについて
ダスティングは、爬虫類にカルシウムを与える最も一般的な方法の一つです。
ダスティングとは

ダスティングは、カルシウムパウダーを餌の表面にまぶす方法です。これにより、爬虫類が餌を食べる際に同時にカルシウムを摂取することができます。
ダスティングの利点
ダスティングの利点は、お手軽さです。購入しておいたカルシウムパウダーをまぶすだけで簡単にカルシウムを摂取させることができます。
適切なカルシウムパウダーの選択
カルシウムパウダーにはさまざまな種類があります。純粋なカルシウムカーボネート(炭酸カルシウム)のものや、ビタミンD3を含むものなどがあります。
種類によって使用方法が異なるので、注意が必要です。また個体によっては好き嫌いがあるようなので、自身の飼育している生体ごとに見極めましょう。
ダスティングの頻度

ダスティングの頻度は、爬虫類の種類や年齢、健康状態によって異なります。一般的に、若い個体や産卵中のメスはより頻繁なダスティングが必要です。
ダスティングの方法
ダスティングの手順は以下の通りです。
- 清潔な容器に少量のカルシウムパウダーを入れます。
- 生きた餌(コオロギやミールワームなど)をその容器に入れ、軽く振ります。
- パウダーがまんべんなく付着したら、すぐに爬虫類に与えます。
ダスティングの注意点
ダスティングの注意点は以下の通りです。
ガットローディング
ガットローディングは、ダスティングと並んで重要なカルシウム補給方法です。
ガットローディングとは

ガットローディングは、爬虫類に与える生きた餌の栄養価を高める方法です。餌となる昆虫に栄養価の高い食事を与え、その昆虫を爬虫類が食べることで間接的に栄養を摂取させます。餌自体にカルシウムパウダーを振りかけるのも効果的です。
ガットローディングの利点
餌の栄養価全体を向上させることができます。またカルシウムパウダー独特の香り等がないため、生体がカルシウムを摂取することの抵抗が少なくなります。
ガットローディングに適した餌
これらの昆虫は、与えられた食事の栄養を効率よく体内に取り込む能力があります。
- コオロギ
- ミールワーム
- デュビア・ローチ
- レッド・ローチ
ガットローディングの方法
ガットローディングの手順は以下の通りです。
- 餌用の昆虫を購入または繁殖させます。
- 高カルシウムの食事を準備します。市販のガットロード用の食事や、カルシウムが豊富な野菜(ケール、ダンデライオンなど)を使用します。
- 24〜48時間かけて昆虫にこの食事を与えます。
- 栄養価が高まった昆虫を爬虫類に与えます。
ガットローディングの注意点
ガットローディングを行う際には、以下に注意しましょう。
- 長期間のガットローディングは避けましょう。昆虫の寿命が短くなる可能性があります。
- 餌の昆虫にも新鮮な水を与えることを忘れずに。
ダスティングとガットローディングの組み合わせ
最も効果的なカルシウム補給は、ダスティングとガットローディングを組み合わせることです。
相乗効果

ガットローディングで栄養価を高めた餌にダスティングを行うことで、爬虫類により多くのカルシウムを効率的に摂取させることができます。安定したカルシウム摂取を行うためには、両方を実施することがおすすめです。
バランスの取れた栄養補給

この組み合わせにより、カルシウムだけでなく、他の重要な栄養素も同時に補給することができます。
フトアゴヒゲトカゲやアオジタトカゲ、リクガメ等の植物食性の爬虫類では、カルシウムが豊富な野菜や果物を与えることで、自然な形でカルシウムを補給することができます。
カルシウム補給の注意点
適切なカルシウム補給は重要ですが、過剰摂取にも注意が必要です。
ビタミンD3とのバランス
カルシウムの吸収にはビタミンD3が必要です。カルシウムとビタミンD3のバランスを適切に保つことが重要です。
数回に1回の頻度でビタミンD3が含まれているビタミン剤を入れるなど工夫しましょう。
リンとのバランス
カルシウムとリンのバランスも重要です。カルシウムとリンの比率が適切でないと、カルシウムの吸収が妨げられる可能性があります。
種による違い

爬虫類の種類によって、カルシウム要求量は異なります。自分のペットの種に適した補給方法を選ぶことが大切です。
個体の状態に応じた調整
年齢、性別、健康状態、繁殖状況などによって、カルシウム要求量は変化します。個体の状態に応じて補給量を調整する必要があります。
カルシウム不足のサイン
適切なカルシウム補給を行っていても、不足のサインに注意を払うことが重要です。
行動の変化
カルシウム不足になると行動が不振になることがあります。
- 活動性の低下
- 食欲不振
- 異常な姿勢や動き
外見の変化
カルシウム不足しすぎてしまうと、骨が軟化してしまい以下のような影響がでます。
- 骨の変形
- 甲羅や皮膚の異常
- 顎の軟化(特にトカゲ類で顕著)
その他の症状
その他以下のような症状もでることがあります。よく観察しましょう。
- 筋肉の震え
- けいれん
- 産卵困難
これらの症状が見られた場合は、すぐに爬虫類専門の獣医師に相談しましょう。
爬虫類を診てくれる動物病院の探し方について、纏めていますのでよければ確認ください。
https://exotic-reptile.com/253/まとめ
爬虫類の健康維持にとって、適切なカルシウム補給は非常に重要です。ダスティングとガットローディングは、カルシウムを効果的に補給する主要な方法です。
ただし、カルシウム補給はあくまでも総合的な栄養管理の一部であることを忘れないでください。適切な温度や湿度の管理、バランスの取れた食事、十分な紫外線照射など、他の要素も同様に重要です。
この情報が爬虫類飼育の参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。