今回はカメレオンについてです。カメレオンは誰しも爬虫類を飼育し始めるときに、「ちょっといいかも?」と思い購入を検討する種類だと思います。しかしそんなカメレオン、実はとても神経質で上級者向けの爬虫類なんです。
私も過去に興味を持ったことがあり、調べることに時間がかかり大変だったので、なぜ「初心者が飼育するのが難しいのか?」説明させていただきます。

この記事は以下のような人におすすめ
・「カメレオンに興味を持ち始めた人」
・「カメレオンの飼育方法を知りたい人」
・「カメレオンが上級者向けといわれる理由を知りたい人」
カメレオンとは?

カメレオンは、爬虫類のトカゲの仲間で、独特の外見と能力を持つ生き物として知られています。一番ポピュラーな特徴は、環境に合わせて体色を変化させることできる能力です。

また他の爬虫類とは異なった特異な目と舌を持つことでも有名です。それぞれの目は独立して動くため、周囲を360度見渡すことができ、舌は体長の約2倍に伸び、瞬時に獲物を捕まえます。
主にアフリカ大陸、マダガスカル島、南ヨーロッパ、中東、南アジアに分布しており、多様な環境に適応して生息しています。

カメレオンの分布や生態についての特徴は以下の通り
- 分布: カメレオンの多くの種はアフリカ大陸に集中しており、特にマダガスカル島は固有種の宝庫となっています。一部の種は南ヨーロッパ(スペイン、ポルトガル、ギリシャなど)や中東、南アジアにも生息しています。主に熱帯や亜熱帯の森林地帯を好みますが、一部の種は乾燥地帯や高地にも適応して進化している種もいます。
生態
カメレオンは主に樹上生活を送る昼行性の爬虫類です。生活の大半は木の枝の上で過ごし、そこで餌を捕らえたり、日光浴をしたり、休息をとったりします。多くの種は単独生活者で、繁殖期以外は他の個体との接触を避ける傾向があります。
身体的特徴
カメレオンの身体は、樹上生活に適応した他の爬虫類とは異なる進化を遂げており、独特の構造を持っています。

- 独立して動く目: カメレオンの目は、左右独立して360度回転することができます。これにより、周囲の状況を常に把握し、獲物や天敵を素早く発見することができます。
- 長い舌: カメレオンの舌は体長の1.5倍から2倍もの長さがあり、先端は粘着性の強い組織で覆われています。この舌を高速で発射して獲物を捕らえます。
- つかめる尾: 長い尾で枝をつかんで体を支えることができます。
- 変色能力: カメレオンの最も有名な特徴の一つが、体色を変化させる能力です。この能力は、体温調節、コミュニケーション、カモフラージュ、威嚇など様々な目的で使用されます。
特徴
変色擬態能力
カメレオンの変色能力は、周囲の環境に合わせて体色を変化させることができます。これは主に捕食者から身を隠すためのカモフラージュとして機能します。しかし、一般的に考えられているほど瞬時に色を変えることはできず、通常は数分から数時間かけてゆっくりと色を変化させます。
木葉に擬態
カメレオンは非常にゆっくりと慎重に動きます。これは捕食者に気づかれないようにするためでもあります。また突然揺れながら歩くことがあり、これは木の葉に擬態していると言われています。
粘着性の舌
カメレオンの舌は、獲物を捕らえるための驚異的な進化を遂げた武器です。舌の先端には、粘着性の強い組織があり、これが獲物に瞬時に付着します。舌の発射速度は非常に速く、わずか0.07秒で獲物に到達することができます。
カメレオンの飼育難易度は?なぜ難しい?
カメレオンの飼育は、一般的に難易度が高いとされています。初心者にとっては特に難しい種類のペットと言えるでしょう。その主な理由は以下の通りです。
環境要求が厳しい
カメレオンは、「温度」「湿度」「照明」などの環境条件に非常に敏感です。これらの条件を適切に管理し、自然の生息環境に近い状態を再現することは容易ではありません。
- 温度管理:昼と夜で適切な温度差をつける必要があります。多くの種は日中25-30℃、夜間20-22℃程度を好みます。
- 湿度管理:種類によって異なりますが、一般的に50-70%程度の湿度が必要です。
- UVB照明:カメレオンはビタミンD3の合成のためにUVB光を必要とします。適切なUVB照明の設置と定期的な交換が不可欠です。
ストレスに弱い傾向あり
カメレオンは非常にストレスに弱い動物です。環境の急激な変化、過度の取り扱い、他の動物の存在などがストレス要因となり、健康状態を悪化させる可能性があります。
一般的に爬虫類はガラスやケージの境界を認識することはできませんが、カメレオンは他の爬虫類とは異なり、知能が高く「自分たちがケージに閉じ込められている」「人と自分たちの間にガラスがある」「人から視線を送られている」ということを認識するとも言われています。そんな知能の高さから、ストレスがかかってしまうと言われています。
給水に工夫が必要

カメレオンは設置してある水を認識できないという特徴があります。そのため、通常の水入れでは水分補給ができず、脱水症状を起こす危険があります。これは飼育を難しくする大きな要因の一つです。
対策として、以下のような特殊な給水方法が必要となります。
これらの方法を適切に実施し、カメレオンが十分な水分を摂取できるようにする必要があります。
餌の種類や給餌方法に注意が必要
カメレオンは主に生きた昆虫を餌とします。適切なサイズと種類の昆虫を用意し、栄養バランスを考慮して与える必要があります。また、餌昆虫にはカルシウムやビタミンなどのサプリメントを与える必要があり、その頻度や量も適切に管理しなければなりません。
病気になりやすい
適切な環境と栄養が提供されない場合、カメレオンは様々な健康問題を抱えやすくなります。代表的な問題には以下のようなものがあります。
これらの理由から、カメレオンの飼育には十分な知識と準備、そして日々の細やかなケアが必要となります。初心者にとっては特に難しい面もありますが、適切な環境と餌、そして特に水分補給に気を付けることで、健康的に飼育することが可能です。
カメレオンの種類の一例紹介
カメレオンの種類の一例を紹介します。
パンサーカメレオン(Furcifer pardalis)

- 外見:鮮やかな色彩で知られる。
- サイズ:オスは体長40-50cm、メスは30-35cm程度。
- 性格:やや神経質だが、慣れれば扱いやすい。
- 特徴:色彩の美しさから人気が高い。
飼育難易度:★★★☆☆
理由:パンサーカメレオンは美しい色彩で知られていますが、やや神経質な面があるため、適切なケージ設定と環境管理が必要です。中級者以上におすすめです。
エボシカメレオン(Chamaeleo calyptratus)

- 外見:頭部に特徴的な冠(エボシ)を持つ。
- サイズ:オスは体長50cm程度、メスはやや小さい。
- 性格:比較的穏やかで初心者向き。
- 特徴:変色能力が高く、飼育下でも繁殖しやすい。
飼育難易度:★★★☆☆
理由:エボシカメレオンは穏やかで飼育しやすく、繁殖も比較的容易です。基本的な飼育環境を提供できれば、初心者にも適しています。
ジャクソンカメレオン(Trioceros jacksonii)

- 外見:オスは頭部に3本の角を持つ。
- サイズ:体長20-30cm程度。
- 性格:比較的穏やかだが、やや神経質。
- 特徴:高地に生息するため、やや低めの温度設定が必要。
飼育難易度:★★★☆☆
理由:ジャクソンカメレオンは穏やかですが神経質な面もあります。また、高地生息種のため、温度管理が重要です。中級者以上に適しています。
ベールドカメレオン(Chamaeleo calyptratus)

- 外見:エボシカメレオンに似ているが、より小型。
- サイズ:オスは体長35-40cm、メスは25-30cm程度。
- 性格:比較的穏やかで初心者向き。
- 特徴:飼育しやすく、繁殖も容易。
飼育難易度:★★★☆☆
理由:ベールドカメレオンはエボシカメレオンに似ているが、小型で飼育しやすいです。初心者にも向いており、基本的な飼育環境を整えるだけで十分です。
カーペットカメレオン(Furcifer lateralis)

- 外見:小型で体が平たい。
- サイズ:体長15-20cm程度。
- 性格:神経質で扱いが難しい。
- 特徴:寿命が短く(2-3年)、繁殖が難しい。
飼育難易度:★★★★☆
理由:カーペットカメレオンは神経質で、環境の変化に敏感です。また、寿命が短く繁殖が難しいため、経験豊富な飼育者向けです。
ヒメカメレオン (Brookesia micra)

- 外見:小型で短い尾が特徴。
- サイズ:体長1.6-5cm程度。
- 性格:非常に神経質で扱いが難しい。
- 特徴:寿命が短く、環境の変化に敏感。
飼育難易度:★★★★★
理由:ヒメカメレオンは非常に小型で神経質なため、環境の変化に敏感です。適切な飼育環境を提供できる経験豊富な飼育者向けです。
ソマリコノハカメレオン (Rhampholeon kerstenii)
- 外見:地味な色彩だが、独特の外観を持つ。
- サイズ:体長15-20cm程度。
- 性格:神経質で扱いが難しい。
- 特徴:適切な環境設定が重要。
飼育難易度:★★★★☆
理由:ソマリコノハカメレオンは神経質で、適切な環境設定が重要です。飼育経験が豊富な中・上級者向けです。
おすすめの購入場所
私が初心者の方におすすめする購入場所は、ペットショップです。
爬虫類イベントでは低価格でレアなモルフが購入できることがありますが、初心者向きではありません。
理由は以下の通りです。
- イベントでは排便の関係などから数日餌が抜かれていることがあり、餌食いや排便の状態がわからない
- 展示スペースが限られているため、1匹の生体をゆっくり見ることができない
- 販売している店によっては、輸入直後にイベントに持ってきており、過度なストレスが生体にかかっている可能性がある
個人的には、店で1時間程度1匹の生体を確認して、問題がなさそうであれば購入検討する形にしたほうが私は良いと思います。
購入時に注意してみる点
購入する際は以下を注視して生体を選ぶことを強く勧めます。
健康状態
目の輝き:目が澄んで輝いているかを確認します。くぼんだ目や濁った目は健康状態の悪化を示す可能性があります。
体型:適度に肉付きがよく、背骨や肋骨が極端に目立たないことを確認します。
皮膚の状態:傷や感染の兆候がないか、皮膚の状態を確認します。
口の中:口の中が清潔で、粘液や異常な分泌物がないことを確認します。
成長具合
若すぎるカメレオンは飼育が難しいため、ある程度成長した個体を選ぶことをおすすめします。 最低でも生後4-6ヶ月程度の個体が良いです。
爬虫類飼育を重ねてきた経験者でも、カメレオンのベビーは立ち上げできず死なせてしまうことも少なくありません。それくらいカメレオンのベビーは難しいと言われています。
野生個体か人工繁殖個体か
可能な限り、飼育下で繁殖された個体(CB:Captive Bred)を選びましょう。 ワイルドで捕獲された個体(WC:Wild Caught)は、ストレスや病気のリスクが高くなります。人慣れの観点からも人工繁殖されたCB個体を購入することをおすすめします。
おすすめの飼育環境
以下おすすめの飼育環境となります。
飼育用品
- ケージ(横60cm×奥行45cm×高さ60cm以上)
- ペットシーツ
- 温度計・湿度計
- 紫外線ライト
- バスキングライト
- 枝
- 給水設備(自動ミストシステム等)
- 霧吹き
時間帯 | 温度 |
日中 | 25~30℃ |
夜間 | 20~22℃ |
時間帯 | 湿度 |
日中/夜間 | 50~70% |
給水設備ってなに?必須?

給水設備というのは、ケージ内に定期的に水を撒く装置や仕組みのことです。ヒョウモントカゲモドキやリクガメ、フトアゴのような乾燥系では登場しませんでした。
飼育が難しい理由の中にも記載しておりますが、カメレオンは設置してある水を認識できないという特徴があります。「水は滴り落ちるもので、溜まっているものではない」という環境起因の認識能力の違いですね。
そのため、流水を作り出してあげる必要があります。
- ドリップシステム:水を少しずつ滴下させ、葉に水滴を作ります。
- 自動ミストシステム:定期的に霧を発生させます。
- 水受け:滴下した水や霧を受ける容器を設置します。
レイアウトは?

生きた植物や人工の植物を配置し、隠れ場所や移動経路を作ります。上下左右に移動できるようにカメレオンが捕まれる太さの枝を作りましょう。
また人の視線にも敏感なため、隠れることができる葉っぱなどで人目を避けられるレイアウトにしましょう。
おすすめの餌
おすすめの餌は以下です。基本的には生き餌が必要となります。
- コオロギ
- ミルワーム
- ローチ(ゴキブリ)
- イエバエ
カメレオンの頭の幅の1/3から1/2程度のサイズの餌を選びます。大きすぎる餌は消化不良や窒息の原因となる可能性があります。
給餌頻度は、幼体は毎日餌を与え、成体は週2~3回程度餌を与えましょう。
餌を与える際には、必ずダスティング、ガッドローディングし、爬虫類に必要なカルシウムを与えましょう。
まとめ
カメレオンの飼育は確かに難しい面がありますが、事前の知識の蓄積と環境準備、そして日々の丁寧なケアにより、飼育は可能です。その独特の魅力と、飼育者との信頼関係を築いていく過程は、他の動物では味わえない特別な経験となるでしょう。
カメレオンを飼育する際は、常に学び続ける姿勢が重要です。新しい情報や技術を積極的に取り入れ、個体の状態をよく観察し、必要に応じて環境や餌を調整していくことが、長期的な飼育成功の鍵となります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。